浄水器メーカー・タカギが解説!キッチン水栓市場動向【特別インタビュー前編】

2023年10月6日
コラム

毎日の暮らしに欠かせないアイテム、水栓。特にキッチンの水栓は、料理に洗い物、シンク掃除と用途が広く、昨今ではライフスタイルやニーズの変化に合わせてその種類や機能も進化しています。そこで今回は、50年来「水」に関わる事業を展開し、世界初となる「蛇口一体型浄水器」の開発でも知られる業界トップクラスの浄水器メーカー・株式会社タカギ様に、キッチン用水栓の市場動向やトレンドについてお話を伺いました。

【1】蛇口一体型浄水器のパイオニア・株式会社タカギ

――はじめにタカギ様のご紹介を兼ねて、現在広く普及する蛇口一体型浄水器が誕生した経緯についてお聞きしたいと思います。御社は1980年代に散水ノズル「ノズルファイブ」がヒット商品となるなど、散水用品メーカーとしても知られますが、浄水器事業はいつから手掛けておられるのでしょうか?

タカギ様:
浄水器事業そのものの始まりは1991年です。当時主な商材としていた散水用品に続く、新たな事業としてスタートしました。はじめに製造・販売したのは直結型の浄水器ですが、競合製品もある中で大きな話題になることはありませんでした。

そんなとき転機になったのが、「蛇口と浄水器が一緒になったらいいのにね」とのお客様の言葉です。ここから「蛇口の中に浄水器を入れる」という新製品の着想を得て、浄水カートリッジや原水/浄水の切り替え機能の小型化という難題をクリアし、今につながる蛇口一体型浄水器が誕生しました。第一号を発売したのは1999年です。

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タカギ様:
発売当初はほとんど反響がありませんでしたが、タカラスタンダードさんをはじめとする住宅設備メーカーとの協働で、分譲マンションなどで採用していただけるようになりました。これを機に2005年頃から徐々に認知が高まり始め、戸建てやリフォームにも広がり、現在に至ります。

――蛇口一体型浄水器の開発は、お客様の声をきっかけにしたものだったのですね。発売から20年以上がたちますが、製品はどのように進化していますか?

タカギ様:
大きく改良されたのは、カートリッジの性能です。発売当初は除去できる物質が3~4種類でしたが、現在は最大18種類と浄水能力が各段に向上しました。加えて水栓そのものに関しても、デザイン性の高い製品やタッチレスタイプなど、ラインナップを広げています。

【2】デザインのトレンドは“スタイリッシュ”。水栓にも表れる好みの多様化

――ここから水栓業界全体の動向についてお聞きしたいと思います。まずは今お話にも出た「デザイン」について、昨今のトレンドはどのようになっていますか?

タカギ様:
ここ5~6年の傾向として、スタイリッシュなデザインが増えていると感じます。以前は丸みを帯びた形状が主流でしたが、近年はシャープな形状が多くなってきました。また、最近では海外のトレンドからグースネックタイプやL字タイプなども登場しています。エレガント、スタイリッシュといったイメージの製品が今後さらに普及していくのではないかと予想しています。

色に関しても、これまでの“水栓といえばシルバー”の一択という状況に対して、バリエーションが増えてきています。ダーク系のシックな色味を好まれる方は多いですね。

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――タカラスタンダードでも2022年8月からブラック色の水栓を展開するようになりました。タカギ様製品の「マット」タイプも人気です。形状や色といった水栓のデザインの変化には、どのような背景があるのでしょうか?

タカギ様:
一つの要因として考えられるのは、家づくりのトレンドの変化です。最近のキッチンは対面型やアイランド型などが増えて、リビングとの境界線があいまいになりつつあります。水栓も周囲から見えやすくなり、インテリアの一部として意識されるようになりました。そうしたことから水栓にも、意匠性の高さや空間全体の統一感などの要素が求められているのではないでしょうか。

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タカギ様:
同時に、消費者の嗜好の多様化も反映されているように思います。その意味では、トレンドが全てという訳ではないんですよね。「傾向としてスタイリッシュなものが増えている」というお話をしましたが、一方で「浄水/原水等の表示が大きく、わかりやすい方がよい」といった方も少なくありません。お客様によってニーズは異なるので、使い心地を含めて、好みに合わせたご提案をすることが大切だと考えています。

【3】当たり前になりつつある浄水機能。ハンドシャワー&タッチレスも人気上昇

暮らしに浸透する浄水器。「蛇口一体型」は総合力の高さで普及率トップに

――続いて「機能」のトレンドについてお聞かせください。まずタカギ様の代名詞でもある「浄水」ですが、浄水器は現在どれくらい普及しているのでしょうか?

タカギ様:
一般社団法人浄水器協会による2021年度の調査では、浄水器の普及率は47.4%となっています(※下図参照)。約半数の家庭で何かしらの浄水機能を使っていることになります。約20年間の推移を見ると、年によって増減はありながらも全体としては伸び続けており、浄水器は今や当たり前の住宅設備になりつつあります。

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タカギ様:
普及が進んだ背景には、「水を購入する」という生活スタイルの浸透があると考えられます。昔は水道水を飲むことが当たり前でしたが、1990年代ごろから家庭用のミネラルウォーターの普及が進み、「おいしい水」へのニーズが高まりました。水道水には安全を保つためにどうしても塩素が含まれるので、カルキ臭さを感じることがあり、飲み比べた時に市販のミネラルウォーターの方がおいしく感じやすいのだと思います。ある意味、消費者の舌が肥えたとも言えるかもしれません。そうした中で浄水器を利用される方が増えてきたのではないでしょうか。

――コロナ禍も浄水器のニーズには影響しましたか?

タカギ様:
在宅ワークの増加や、外食の機会の減少で、いわゆる「おうち時間」が増えましたよね。それに伴い家での飲食が増えたことも、浄水器の利用を広げる要因の一つになったと思います。当社でもコロナ禍以降、「浄水器を付けたい」というお問い合わせが増えました。

――「おいしい水が飲みたい」という点では、ミネラルウォーターを買う選択肢もありますが、浄水器にはどのようなメリットがありますか?

タカギ様:
まず、コスト面が挙げられます。製品にもよりますが、ミネラルウォーターを購入するのに比べ、浄水器の方が日々使う水の価格を安く抑えられる場合が多いですね。例えば、当社の蛇口一体型浄水器を例にした料金モデルでは、1リットルあたりの価格が3.8円と、市販のミネラルウォーターに比べて約40円以上お得です。さらにウォーターサーバーとの差は150円以上(※下図参照)。毎日使用する水だからこそ、コストパフォーマンスの高さは大きなメリットになります。

ペットボトルなどの保管場所が不要で、ゴミも少ないというのも利点ですね。加えて、直結型や蛇口一体型、アンダーシンク型などシンクに水を吐出するタイプなら、浄水で野菜を洗ったり米を研いだりすることも簡単にできます。使える場面が広がるという点も、浄水器導入を決めるポイントになっていると思います。

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タカギ様:
また、意外と知られていないのが、水道水にもミネラルが含まれているということ。含有量もミネラルウォーターと大きく変わらない場合もあるんです(※下図参照)。浄水器で塩素を取り除けば、実は家庭の水道でも市販のミネラルウォーターと遜色ない水が飲めるんですね。

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――それは知りませんでした。浄水器の利用を検討している方はぐっと背中を押されそうですね。いざ浄水器を導入しようと思ったときに迷うのが、「どのタイプの浄水器にするか?」という点だと思いますが、選び方の基準などはありますか?

タカギ様:
大前提として基準になるのは、導入時の住宅環境や、工事の可否でしょうか。例えば「今のキッチンのまま、リフォームや蛇口の交換などはせずに浄水器を使いたい」ということであれば、直結型やポット型・ピッチャー型などが選択肢になると思います。「蛇口は交換してもいい」「キッチンをリフォームするので一緒に浄水器の導入も考えたい」といった方なら、水栓一体型(蛇口一体型)やアンダーシンク型なども候補に入ってくるでしょう。導入時のシーンによって選び方は変わってきますね。

――蛇口一体型浄水器は現在もっとも普及率が高いタイプですが、どういった理由で多くのお客様に選ばれているのでしょう?

タカギ様:
蛇口一体型は、蛇口でありながら浄水器でもあるので、追加で他の物を置く必要がなく、省スペースで利用できるのが大きなメリットです。シンク周りもシンク下の収納スペースもすっきり保つことができ、掃除をする時にも邪魔になりません。また、以前はカートリッジの小ささから限界があった浄水能力も、近年大きく向上しています。「浄水能力」と「利便性」を兼ね備えた総合力の高さが人気のポイントですね。

こちらも人気!ハンドシャワー&注目のタッチレス

――続いてお聞きしたい機能が「ハンドシャワー」です。こちらも現在広く普及していますね。

タカギ様:
今の水栓はハンドシャワー機能がついたものが圧倒的に多いですね。当社が蛇口一体型浄水器を発売した1999年の時点ですでに市場に登場していました。現在の当社製品のラインナップでも、システムキッチン用は全てハンドシャワー付きです。

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――人気の理由はやはり利便性の高さでしょうか?

タカギ様
そうですね。食器を洗った後や、シンク掃除をする時など、ハンドシャワーがあればシンクの隅に残った泡なども楽に洗い流せます。近年はシンクのサイズが大きくなってきているので、よりニーズが高まっているのだと思います。

調理中に鍋に水を入れる時などにも便利です。シンクの中に鍋を置くと底がぬれて、加熱機器に載せる前に拭かなくてはいけませんが、ハンドシャワーの場合、ホースの長さが足りれば、鍋を天板に置いたまま水を入れることができます。

――「タッチレス」も最近人気が高まっている機能です。市場にはいつ頃から登場したのでしょうか?

タカギ様:
はじめは医療現場でのニーズが高かったようで、そのあと公共施設などに普及し、2000年代ごろから一般住宅にも広がったようです。

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――コロナ禍の影響も大きかったでしょうか?

タカギ様:
手洗いの習慣がより浸透し、「手を清潔にしたい」「いろいろなものに触れたくない」というニーズが高まる中で、やはり「非接触」はキーワードになっていると感じます。当社でもタッチレス水栓に関する問い合わせは増えています。リフォームのお客様からもよく問い合わせをいただきますね。

――これからさらに広がりを見せそうなタッチレス水栓ですが、メリットを改めて教えてください。

タカギ様:
ご存じの通り、水や泡がついた手で水栓を触らずに済むので、水栓周りをきれいに保つことができます。また、水をこまめに止めやすくなるので、節水効果も期待できます。省エネに敏感な方が増えている今、家計や環境にやさしいという点は大きな魅力になっていると思います。

なお、シャワー/ストレートといった水形の切り替えや、温度、水量の調整は、ほとんどの製品で手動のボタンやレバーで行う仕様になっています。停電時は、吐水止水の操作も手動で行うものが多いようです。

――細かい使い勝手は好みもあるので、実物で体験してみるといいですね。

<まとめ>

多彩な水栓が登場している背景には、住環境の変化や好みの多様化がありました。デザイン、機能ともに選択肢が増える中で、お客様に合った水栓を選んでいただくためには、製品が暮らしにもたらすメリットや実際の使用シーンをより具体的に想像してもらうことが大切なようです。次回後編では、お客様が特に気にされる「水栓にまつわる問い合わせ」とタカギ様での対応例を紹介します。

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